Chapter2  ザ・ファースト・トリップ


Chapter2-2 100分の5のホンモノ


 そう、思い出した。
 ベンジャミン・ハロルド=シェリンガムは、スコットランドヤードの超常犯罪調査部(UCB)の自分のデスクで過去の事件報告書に目を通し、分類作業をしていたのだ。
 ここに来てから二週間。彼は、たまに印鑑を押したり、たまに部下の話を聞いて、イエスかノーを言ったりする合間に、UCBの過去の膨大な事件報告書に目を通し続けていた。
 今は夕刻。部下たちはほとんどが出払い、部屋の中は静かである。ときおり、ひそひそとお喋りに興じている婦警二人のどちらかが漏らす笑い声と、居残り組の刑事が苦情電話に対応している声。すぐ目の前のデスクで、巡査部長のクライヴ=コルチェスターがパチパチとキーボードを打っている音が聞こえてくるぐらいだ。
 時は夕刻。ベンジャミンのデスクの上には書類の山が三つ、形成されていた。

 ケース1。キャサリン=ベントリーは8月26日の夜20:00頃、家に侵入した何者かに金品を強奪された上、性的暴行を受けた。帰宅した夫が警察に通報。事情徴収によると、ベントリー夫人は、煙のように現れた夢魔インキュバスに被害を受けたと主張。UCBで再調査の結果、二階の窓から音もなく家に侵入したのはベントリー夫人の浮気相手、ジム=ベイツだと判明。彼の身柄を確保し、容疑を住居侵入と詐欺に切り替えて送検。

 ケース2。園芸用品卸の株式会社ウォリック商会の社員が三名、帰宅途中に何者かに襲われ殺害される。凶器はスコップ。同じ場に居合わせた目撃者の証言によると、犯人は三ヶ月前に死亡したはずの元社員リサ=デービスだったという。リサは、社員間の陰湿な嫌がらせを苦に自殺しており、UCBにて再調査を実施。その結果、犯人はデービスの兄アランと判明。同社役員宅にて女装しスコップを振り回す犯人を、機動部隊(CTF)がやむを得ず射殺。自宅から証拠物件を押収。

 この二件のような事件が、いわゆる大半を占める“よくあるケース”である。
 ベンジャミンは読み終わった報告書を、一番右の山にポンと載せた。当然ながらこの山が最も高い頂を誇っている。
 やれ夢魔が現れただの、吸血鬼に襲われただの、自殺した女が殺人鬼になって復讐しにきただの……。始まりが大仰な事件も、結果は尻つぼみに終わることが多かった。竜頭蛇尾というやつだ。
 また、被害者にも、不愉快な共通点があった。彼らの社会的地位の高さである。“金持ちで偉い人たち”が被害者の大半を占めているのである。
 つまり、「そんな馬鹿げたことが起こるわけがないでしょう?」などと、面と向かって言えない相手に対応するのが、このUCBの主な仕事だということだ。実際、動くときは他部署と連携し、主に被害者のケアを担当する。“奥方の苦情処理部”という蔑称まであるぐらいだ。

 とはいうものの。
 ベンジャミンは積み重ねた書類の山のうち、一番左の山に目を移す。
 そこには件数は少ないものの、未解明な点の多い迷宮入り事件の報告書が積み重ねられていた。ごく少数だが、どうにも腑に落ちない事件が起きているのも事実なのだ。
 単なる調査不足なのか、うまく証拠が集まらず未解決のまま時効を待つことになってしまった事件なのか……。例えば、次のような事件だ。

 ケース3。フォード夫妻は、2004年3月14日未明のよく晴れた満月の夜、自宅に侵入した何者かに襲われる。夫妻は就寝中で、ケイト夫人はいきなり鉤爪のようなもので胸を切り裂かれ、ベッドの上で絶命。1階まで逃げ延びた夫ジョンはセキュリティ会社への直通電話をかけ、離婚した元妻のナンシーに襲われていると通報した。数分後、警備会社のスタッフが駆けつけたが、地下室のワイン蔵の中で心臓をえぐり出され死んでいるジョンを発見。地下室へと続く分厚い扉は、中央を真っ二つ割られ、物凄い力で破壊されていた。ワイン蔵に残されていたのは真珠のネックレス。ジョンがナンシーに送ったものだそうだ。そして、ジョンの心臓とナンシーの姿はどこにも無く、今でも見つかっていない。
 
 ベンジャミンは、ため息をついて書類を机の上に置いた。──近隣の住民は銃声一つ聞いていない。武器を持たない女がどうやってこの写真のような分厚い扉を素手で壊したのか? こんな扉を壊せるような銃器に消音機をつけることは不可能だ。
 UCBの当時の部長はこの事件の犯人に仮の名前を与えていた。狼女ナンシー。獣になる女、ナンシー。
 馬鹿げていた。怪力、鉤爪、満月の夜。確かに三拍子揃ってはいるが、それじゃあ、まるで映画の世界じゃないか。

  ──カサッ。
  物思いにふけっていたベンジャミンは、報告書の山から何か書類が一枚、床に落ちたことに気付いてふと我に返った。いけない、と手を伸ばして書類を拾い上げる。
  それは何か古ぼけた一枚の書類だった。タイトルには「業務委託に関する覚書」と書いてある。
「何だこれは?」
  思わず口に出してつぶやいてしまった。裏を見てみても何も書いていない。また表に戻って日付と末尾の署名二つに目を走らせる。
  日付は1907年8月20日。100年も前の書類ではないか。ベンジャミンは小さな驚きをもって、インクで書かれた筆記体に目を凝らす。
  連名になっている署名の片方は、当時のスコットランドヤード犯罪調査局(CID)局長、もう片方は──
「王立闇法廷ロイヤル・コート・オブ・ダークネス、事務総局長兼筆頭裁判官、カーマイン・クリストファー=アボット?」
  奇妙な組織名だ。しかも……。ベンジャミンはその署名の横にある拇印に目を近づけた。茶色がかったその色は、どう見ても古くなった血液の色である。血判であろう。なんと古風な、と彼はその血判を指でなぞった。

「部長」
 その時、名前を呼ばれてベンジャミンは書類から顔を上げた。電話の受話器を持ったヴィヴィアン=コーヴェイがこちらを見ている。
「お電話です。殺人捜査部東部地区課のコールマン警視です」
「コールマンか。いいよ、こっちにつないで」
ベンジャミンは相手の名前を反芻し、鳴り出した電話の受話器を取った。


「それで……、どういうわけで、君は武器を持たない相手を半殺しにしたんだ?」

 穏やかな口調で、ベンジャミンは長身の男に問いかけるように言った。彼のデスクの前に立っているのは、レスター=ゴールドスミス警部補。がっしりとした体格を持ち、警察官というよりまるで軍人のようにいかめしい顔をした男だ。年齢は38才。ベンジャミンと同い年である。
  “軍人”は、ぎょろりと視線をめぐらせて、ベンジャミンを見下ろした。
「現場にいなかったアンタには分からんよ」
「ずいぶんな言い方だな」
 ぼそりと相手が漏らした言葉に、ベンジャミンはニヤと笑みを返した。部下に反抗的な態度をとられることは珍しくない。
「レスター。もう少し現場の状況を詳しく報告してみたら?」
 その時、横から口を出してきたのは、エイドリアン=オースティン警部補。ぽっちゃりした体格の中年男だ。年齢は45才。警察官というより、クリスマスの日に鼻を赤く塗って、トナカイの着グルミを着て孤児院を訪問することが似合うような男だった。 
  レスターは、ぐっと口をつぐみ、ヘの字口を作った。それを見て、ベンジャミンは隣りのエイドリアンに目線を移す。“ぽっちゃりトナカイ”は、視線を受け、仕方ないといった風に口を開いた。
「コールリッジ夫人邸──別名、バナー通りの幽霊屋敷に出没していたという“幽霊”が、実は住み着いていた浮浪者たちだったということは、すでに聞かれてますよね」
「ああ。聞いたよ。 殺人調査部のコールマンからな」
「ええと、その浮浪者のリーダー格の男がですね、投降するときに怪しい動きを見せたんです。それでレスターは彼に殴りかかったんですよ」
「レスター? そうなのか?」
 促すと、軍人はフンと鼻を鳴らした。レスター、と低い声でベンジャミンがもう一度彼の名前を呼ぶと、彼はしぶしぶといった感じで続けた。
「後ろに手を回して、銃か何かを準備してるように見えた」
「そうか」
 ベンジャミンは、先ほど殺人調査部の同期、コールマン警視からかかってきた電話の内容を思い出している。
 突然、浮浪者に向かって殴る蹴るの暴行を加えだしたレスターを止めたのは、たまたま近くで別の事件の捜査を行っていた、コールマンの部下たちだったのだ。コールマンとは親しくしてはいるのだが、どうも要らぬ借りを作ってしまったようだ。

「僕はここに来てから、まだ二週間だ」
 ベンジャミンは言葉を選ぶように、ゆっくりと言った。「当然、君たちの方がベテランだ。僕はただ教えて欲しいだけなんだ。本当に、その容疑者の浮浪者をこっぴどく痛めつける必要があったのかどうか。──過剰な暴力は、ともすれば、君たち自身を危険に貶めるぞ。そうは思わないか?」
レスターは、ジロリと剣呑な目を向けてきた。
「自分が殺された後に、後悔したって遅いんだよ。ただそれだけさ。クビや減俸、何でも受けて立つぜ。自分の命より大切なものはないからな。──もう、席に戻ってもいいかい? シェリンガム警視どの」
 ベンジャミンは眉間に皺を寄せた。
 フン、と鼻を鳴らしてレスターはゆっくりと席に戻った。エイドリアンの方は肩をすくめ、ジェスチャーをして“申し訳ない”と謝罪の意を表明する。
 ベンジャミンはそれには手を挙げて答え、エイドリアンも席に下がらせた。
 繰り返すが、言うことを聞かない部下は初めてではない。とくにベンジャミンのように才能とコネクションを併せ持ち、若くして高い地位に付いている男なら尚更だ。
 とは言うものの。やれやれと。彼は心の中でため息をついた。過去の事件簿の整理の前に、足元にも目を向ける必要がありそうだ。
  ベンジャミンは資料整理係のシシーを呼び、そして少し考えてから、ずっとパソコンに向かったきりのクライヴ=コルチェスターにも声をかけた。
「クライヴ、君も相談に乗ってくれるか?」


  クライヴ=コルチェスターの階級は巡査部長で、28才。彼はありていに言うと太っている。肥満体だ。無口な男で、古風なデザインの銀縁の丸い眼鏡をかけている。
  ただし、彼が席を立つことはほとんど無い。毎日、背中を丸めてパソコンに向かい、インターネット関連から回ってくる苦情を処理することが主な業務内容だ。ベンジャミンはこの二週間、彼と話したことはほとんどなかった。
  シシーに対し、レスターに関する人事関係の書類を出すように命じると、ベンジャミンはクライヴの席のすぐ隣に立ち、彼を見下ろした。陰気な眼鏡の奥で、小さな瞳が上司を見上げている。
「実は最近、過去の事件報告書の整理をしてるんだが、君も手伝ってくれないか」
  クライヴは微かに首を縦に動かした。表情は全く動かない。
  ベンジャミンは自分のデスクに詰まれた山を指差し、ああいったアナログではなく、インデックスを作ってデータベースを作って整理をしたいといったようなことを説明した。
  シシーが人事関係の書類を持ってくると、ベンジャミンは立ったまま、レスター=ゴールドスミスのここ3年の賞罰と給料表を確認し始めた。書類に目をやりながら、クライヴに指示を出す。
  やがて、ベンジャミンは方針を決め、先の暴行を受けた容疑者に対するフォローと、レスターの減給の程度を決めた。本人を呼んで淡々と処分を伝えた後に、他部署に連絡し、手続きを取った。そんなことをしているうちに、日はすっかり落ちていた。


「レスターは、本当に殺されかかったことがあるのさ」
 殺人捜査部への謝罪電話を終えた後、ベンジャミンが受話器を置くのを見計らったかのように、唐突にクライヴが言った。
  気付けば、部署の中には彼と自分しか残っていない。時刻は19時を回っている。
「何? どういうことだい?」
 ベンジャミンは彼に顔を向けて、尋ねた。
「本人から聞くのが一番愉快なんだがな。ま、アンタにゃ話さんだろうなあ」
昼間の無表情とは打って変わって、クライヴは、ニヤニヤと嫌な笑いを唇に浮かべ始めた。
「俺たちヤードの拳銃不携帯の伝統  (ロンドンにいる警察官は伝統的に銃を携帯していません。これはヤードが設立された当初から変わらない伝統です。テロ対策部や機動隊はもちろん武装していますけどね。) に感謝すべきだぜ。そうじゃなきゃ、レスターは今ごろ2ケタぐらいの容疑者を射殺してることになる」
 この部署には、上司に対する口の聞き方を知っている人間はあまり居ないらしい。ベンジャミンはそう思ったが、その程度のことで怒るほど狭量な人間でもなかった。
  むしろ、無口なクライヴが語りだしたことに、がぜん興味が沸いていた。
「レスターは吸血鬼に噛み付かれた上、殺されかかったんだとさ。興味があるなら3年前のコード26475912番の事件報告書を見てみな。それを見れば“暴力刑事レスター”の誕生に立ち会えるぜ」
「ああ、あれか」
 ベンジャミンはすぐに思い至り、一番低い山の中から該当の書類を見つけ出した。
「この事件は未解決じゃないが、確かに奇妙な点が多い」
「……アンタ、変わった奴だな」
 くく、とクライヴは喉の奥で笑った。眼鏡の奥から陰気な瞳を向けてくる。
「2年もすれば、あんたは殺人調査部の西部地区課長になれるんだぜ? 上層部はカヴェンディッシュの我がままを期限付きで聞いただけさ。アンタの能力と政治力は奴より確実に上だ。こんな左遷先で頑張らなくたって、奴が昇進するのを2年待てば、アンタはその後釜に返り咲けるのによ」
 フ、とベンジャミンも笑った。レスターの事件の報告書を手で持ちながら、
「そういう話はよしてくれ、クライヴ。俺は頑張るのが大好きな阿呆なんだ」
「そのようだな」
 しれっと、クライヴはつぶやくと、ベンジャミンに自分のパソコンの画面を見るように顎をしゃくった。
「お望みのデータベースを作ってやったぜ。まだインデックスだけだがな。明日にゃ、アンタのパソコンから見れるようにしといてやる」
 ベンジャミンは言われるがままに画面を覗き込み、へぇと感嘆の声を漏らした。仕事の早さは言うまでもなく、こちらの意図を正確に読み取り作られている。
 この時になって初めてベンジャミンは、クライヴが見た目よりもずっと優秀であることに気付いた。
「ケースBの発生率はどれぐらいか、すぐに出せるかい?」
クライヴは、ちらりと上司の顔を見た後、手を伸ばしてキーボードを叩いた。
「5.1%。約5%だ」
「そうか。体感してたのと近いな」
 ベンジャミンは満足した様子でつぶやく。本当は3%だと思っていたが、少し多い。
 ケースBとは、ベンジャミンが分類した、例のどうにも腑に落ちない事件のことである。大抵が未解決だが、中には解決しているものもある。彼はその発生率を100件中、3件程度かと思っていたが、実際には100分の5の確率らしい。
「ありがとうクライヴ、助かったよ。君は仕事が早いな」
 頷きながら、部下をねぎらう。クライヴはまんざらでもない様子でニヤリと笑った。
 と、ベンジャミンはクライヴの机に載っている古い書類に気付いて、目を留めた。それは先ほど、コールマンからの電話を取る前に見ていた奇妙な書類だった。
「クライヴ、それ──」
  ベンジャミンは、書類を顎でしゃくりながら言った。
「報告書の中に混ざってたんだが、何の書類だか分かるかい? 何だか100年ぐらい前の日付になってるようだし、えらく古い書類のようだが」
 
 そう、言った途端。
 クライヴはサッと顔色を変えた。笑みは消え、驚きに目を見開く。そして、彼に似合わない頓狂な声を上げた。
 「──ヘェッ?」

 クライヴの尋常ならざる反応を見て、え? とベンジャミンも声を漏らした。何か自分が妙なことでも──
「アンタ、これが読めるのか?」
 クライヴはひどく遅い動作で書類を手に取った。
「ああ、読める、よ?」
 ベンジャミンも少々面食らいながら続ける。
「100年ぐらい前の日付だが、シェイクスピアみたいな難解な言い回しが使われてるわけじゃないし。読めるよ。その、アボット卿ってのが誰なのか、君なら知ってるかと──」
「あんた、眼鏡かけてないよな?」
クライヴは上司の言葉を遮って続けた。その目は真剣だ。「コンタクトレンズは?」
「つ、使ってないけど……」
「そうか」
「クライヴ?」
 一度、うつむいて書面に目を落としたクライヴ。しばしの間のあと、彼は突然、肩を震わせて笑い出した。
「驚いたな。驚いたぜ、サプライズ・サプライズ」
「何?」
「ようこそ、シェリンガム部長。スコットランド・ヤードの掃き溜め。魔窟UCBへようこそ」
 面くらっているベンジャミンを尻目に、クライヴは上機嫌な様子で、椅子の上で身体を反り返らせた。
「歓迎するぜ。あんたも来るべくして、この魔窟にやってきた人間のようだな」
「クライヴ、一体何を言ってるんだ?」
 対して、相手のあまりに不可解な行動に、ベンジャミンはさすがに眉間に皺を寄せた。声にかすかな苛立ちが混ざっている。
「ああ、すまん。部長」
 姿勢を元に戻すと、クライヴは椅子を回しベンジャミンの方をきちんと向いた。
「俺が知る限り、歴代のUCB部長の中でその書類を読めた奴は一人も居ない。それをあんたは読んだ。しかも裸眼で。だから驚いたのさ」
「何言ってるんだ。それ英語で書いてあるじゃないか」
「そういう問題じゃないんだよ」
 なだめるように、クライヴは言った。
「その書類は“素養”がないと読めないんだよ」
「“素養”?」
 くく、とクライヴは喉の奥で笑った。
「あんた、本当に魔法使いなのかもしれねえな」
 ベンジャミンはそれに対し、どう言葉を返してよいか分からず、ただあっけに取られてクライヴの顔を見ていた。
「嘘だと思うなら、レスターやエイドリアンにこれを見せてみな。ただの白紙だって言うぜ」
 クライヴは、ニヤニヤと嫌な笑みを唇に張り付かせたまま、例の書類に目を落とす。
「まあ、いいさ。説明してやるよ」
 陰気な男は眼鏡を直し、例の書類を見ながら一字一句を指差しながらベンジャミンに丁寧に説明を始めた。ベンジャミンも近くの椅子を引き寄せ座りながら、ようやく落ち着いてクライヴの話に耳を傾けた。

「王立闇法廷ロイヤル・コート・オブ・ダークネスってのはな、驚くなかれ。れっきとした政府直轄の組織さ。MI5が出来る前、東洋人が魔術を使うと本気で信じられてたころに、そんな怪しい政府組織が存在したんだよ。もちろん今は解体されて存在してないがな。短い10数年の間、連中がやってたことを“業務委託”されたのが、うちの部──すなわち、この超常犯罪調査部(UCB)ってことさ」

 
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Talking Rabbit with Shovel
by Kanae Fuyushiro Copyright (C) 2006